受験生の12月。世間が慌ただしくなる中、俺の人生は、ついに完全に焼き付いた。 正直、この時期のことはよく覚えていない。 記憶が断片的で、霧がかかったようにぼんやりしている。それほどまでに、何もかもが回っていなかった。
パチンコやスロットで「フリーズ」を引けば、それは至福の瞬間だ。大量出玉が約束される瞬間だ。個人的に秘宝伝のフリーズは最高だった。
すまん!話が逸れた。
19歳になったばかりの俺が神から授かった誕生日プレゼントは、「人生という基盤そのもののフリーズ」だった。
まず、生命線だった「洗車バイト」が凍結した。 夏場はあんなに調子よく稼げたのに、冬になるにつれ次第に先輩たちからも声がかからなくなり、物理的に軍資金が底をついた。
12月以前は割りと上手に遊べていた。
今まではプラスまでとはいかなくても、トントンちょい下の収支だった。
ここに至るには思い当たる節がある。
2000円~3000円程度だった投資額が少しづつ増えていったのだ。
5000円、7000円、10000円・・・。
昭和生まれのCPUが導き出した「永久機関」の投資ルールを俺自身がぶっ壊し、深追いし火傷をしたのだ。
あれほど新聞屋のスロカス先輩から深追いするなと言われていたのに。
当時はその日の投資額がオーバーしたら先輩や友達の遊戯を見ているか、家に帰っていた。先輩と一緒に打つ時はたいてい晩飯がついてきた。金無しのガキからした本当にありがたかった。
当時は一緒に打っていた先輩がプラスになるとお小遣いをくれた。これを収支に入れると多分トントン越えたかもしれない。
理屈は分かっていてもバグったCPUだけは止まらない。完全に欲望という電撃に俺のCPUは焼かれていたのだ。
なけなしの小銭を握りしめてホールへ駆け込むが、スロットもパチンコも何もかすらない。 「勝率2割の永久機関」なんてものは、ただの妄想だった事に否応なしに気付かされる。確率は残酷に収束していく。
そして、本業であるはずの「お受験」これはもっと迷走していた。
予備校をやめてしまった俺は、模試すら受けていなかった。 自分が今、全国の受験生の中でどの位置にいるのか。合格まであと何キロあるのか?全く分からずじまい。そんなものだから余計に現状把握が怖くて一度もチェックしていなかったのだ。
現在地が分からないマシンが、深い霧の中をライトも点けずに全速力で走っているようなものだ。
図書館に行っても、もはやペンは動かない。 視界に入るのは、隣で同じように死んだ目をしている「W荒波」の横顔と、開いたまま一度もページがめくられない参考書だけ。もがけばもがくほど周囲の受験生たちが放つ「追い込み」の熱気が、場違いな俺たちの体温を奪っていく。
言い換えれば「ブレーキとアクセルを同時に踏みちぎっている」こんな状態だ。
「これから、俺はどうなるんだ?」
その問いに答える機能は、今の俺にはなかった。
受験のプレッシャー。なくなるバイトとお金。すべてがすりおろされていく感覚。
大根おろしの上の大根みたいな感じだ。
一日過ぎるたびに前後に動く。すりおろされて積もるものは、身から出た不安と焦りと回転するリールへの渇望だ。
ただ一つの希望。
設定1のような人生だがありがたい事に五体満足である。人生が設定1なら波をつかむしかない。機械割りはあくまでマイナス。ただ単にレバーを叩いてはダメなんだ。
俺はその時思い出したんだ。
俺はそもそもなぜ新聞屋で働いたんだ?って事を
バイクを維持する為の深刻な金欠が続き、バイトを探す中、友達の紹介という期待値マックスのほぼ確定の酒屋バイトに「秒」で裏切られ、その帰り道、に通った新聞屋に酒屋に出すはずだった履歴書を出した事。のちにそれがとても自分の中で大きな転機になった事。
そう、動けるなら動く。もがけるならもがく。
自分の足でホールに行けるし、自分の指でレバーを叩ける!五体満足の体を持ち、設定1のCPUを持つ者の使命なのだ・・・
きっと。
俺は絶対に俺自身の期待値を裏切ってはいけない。
見失う自分自身。大根おろしみたいに自分が削れて、その削りカスが積もっていく。 そのカスを全部、パチスロの投入口に突っ込んで、またレバーを叩く。「まだ動ける、まだ打てる。五体満足なんだから、これでいいんだ!」改めて振り返るとそんな感情だった受験生(浪人)
という事で今だに人生迷子の自分はこの後ホールに行ってきます(笑)結果は後日ブログで!


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