【第八話】閑話・クリティカルマイナスの検証比較。

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前回のラスト、あんなにカッコいい決意をして、翌日俺はホールへ向かった。 「俺は、俺自身の期待値を裏切ってはいけない」 ……なんてがらにもない事をブログに書いておきながら。

結果を言おう。

2日で11万7,000円、溶かした。

1日目。スマスロ・エヴァゴジ。 朝一400Gほどで「G細胞活性化」を引いた。「よし、これで捲れる」そう確信した瞬間、地獄を見た。

まさかのボーナスもATも「完全スルー」。 これって、マジであり得るのか?

これを食らった仲間がいたら、ぜひコメント欄で俺を慰めてほしい。そこから無心でレバーを叩くも、600G手前で引いたボーナスからAT駆け抜け、ハマりと駆け抜けの無限ループ。初日の収支はマイナス56,000円。

2日目。「ダンベル何キロ持てますか?」を初打ち。 朝一から380G前後でCZ外れ。次のCZ(360G位)でようやくボーナス。それから350G前後で引けども引けども、上乗せはほぼ無し。一度だけ上位AT「資格取得」の得るも完全スルー。その後のボーナスは、ただただ「無風」だった。マイナス61000円。

期待値? 機械割?なんだそれ。 クソな言葉が、胃の痛みと共に逆流してくる。吐きそうだ。

もうスロットなんて止めてやる。というかマジで物理的に打てない。 

ここで一度、俺のCPUの性能を当時と比較して「検証」してみた。

■ 19歳の俺のCPU(エセ勤労少年Ver.)

  • OS: 欲望100%(パチンカス・エディション)
  • 計算能力: 2000円を「永久機関の種銭」と誤認するバグ搭載
  • 状況判断: 霧の中を無灯火で全速力走行中。ブレーキは故障中。
  • 特徴: 根拠のない「波」を信じ、設定1でも捲れると本気で思っていた。

■ 今の俺のCPU(整備士Ver.)

  • OS: 現実逃避 + 経験則(どM仕様)
  • 計算能力: 11万7,000円あれば、どれだけ必要なパーツ買えるかを瞬時に判断できる
  • 状況判断: 負けると分かっていながら「検証」と称してレバーを叩く確信犯。しかし、心の中でこっそりフリーズを狙っている。切実に・・・。
  • 特徴: 「G細胞活性化スルー」というこの上ない不条理を食らい、ブログのネタに昇華することで心の平穏を保とうとするが実際微妙。

今の俺は、負ける理屈をある程度だが理解している。それでもレバーを叩く手が止まらないのは、これまでの経験上、「絶望的な状況からでもプツンと暗転する液晶画面そこから捲れてしまった奇跡の価値」を何度も体験してきたからだ。

あの「脳が焼け」るような逆転劇の快感が忘れられない。

その一握りの「残像」を追い求め、期待値という理論を自分の都合のいいように解釈し、結局は泥沼に足を踏み入れる。

これは俺だけではないはずだ。

今の俺なら、11万7,000円負けても、なんとか取り戻せる。整備士として働き、自分の食い扶持を稼いでいるというきちんとした「足場」があるからだ。

だが、当時は違った。

19歳の、あの冬。 洗車のバイトは凍結し、財布は空っぽ。おまけに受験。という逃げ場のないプレッシャーに押し潰されそうになりながら、それでも奇跡を信じてホールに通っていた。あの頃の価値観で換算した11万は、今の価値で言えば100万、それ以上の重みがあったかもしれない。大げさに言えば、一度の負けが、そのまま「人生の終了」に直結するような重さ。そんな綱渡りのような状況で、俺は一体何を信じてレバーを叩いていたのか。

検証結果。 ……1ミリも進化していなかった。

いや、むしろ進化していないのは、俺の「感情」の方かもしれない。 19歳の俺は「無知の純粋さ」でもがいていたが、今の俺は「負ける理屈」を理解しながら、それでもなお、あの身が削れるような「大根おろしの感覚」を求めてホールに吸い込まれているのかもしれない。

結局、俺の人生の「基本プログラム」は、あの12月のフリーズから変わっていない。

さて、次回からはまた時計の針を戻す。 あの冬、「人生のフリーズ」を食らっていた俺たちが、どうやって生き抜いたかを・・・。

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