【第壱弐話】木目の天井、合法暴力の極みからの覚醒

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新しいバイト先は同じような大学生や年の近い人たちが多く、すぐに打ち解け、週末や休刊日前になると皆で飲みに行ったりしていた。どちらかというと大学よりキラキラしていた。

ある日仕事終わりの雑談中、

「荒波君さ、スロットとかやらないの?」

その一言で、十分だった。

バイト仲間の何気ない一言。その瞬間、俺の中の「荒波」が、ギュイィィィーンと凄まじい音を立てて再起動する。

「……ああ、やるよ。むしろそっち側の人間だよね、俺」。

翌日、俺たちはバイト先からわずか3分の場所にあるホールへ繰り出した。当時は、マックス711枚の『大花火』が熱かった時代だ。

だが、今の俺はかつての俺ではない。限度額を厳格に設定する。それは、あの受験期に身体で学んだ、俺なりの「自主規制」だった。


当時のマイルール基本1日10000円まで、前回プラス収支ならその金額の半分(限度30000円)までは投資OKみたな感じだったと思う。


この時期は純粋にスロットを楽しめていた。

思うに、やることが多く、単純にスロットにさく時間もなく、ちょうどよい気分転換になっていた。ちょっと打ってMAXとって、学校行かなきゃーみたなスタイルだった。

驚いたことに、新聞屋のバイト連中はほぼ全員がスロッターだった。いつしか事務所の片隅にはみんなが買ってきた情報誌が山のように積まれるようになり、下手な本屋より充実した「パチスロ図書館」と化していた。


朝3時出社で配達、店番(新聞屋の苦情処理等配達から朝九時までやっていた。)、大学orスロット、部活orバイク、就寝or飲み。

二十歳大学生活はこのサイクルで回っていた。


昼間は講義。夕方相変わらず道場で「サンドバッグ」にされる日々。

狙いすました一撃を食らい、俺は二度ほど意識を飛ばされた。何をどうくらったかなんて覚えていない。耳の裏が切れていて目を開けた時に覚えているのは覗き込むマネージャーの顔とその背後のいつも道場の冷たい木目天井だった。 「また、木目天井だ……」 そんな事を余裕すらない頭でぼやーっとした記憶がある。

「これは合法暴力の極みだな」と冷めたことを思っていた。

しかし、俺は約束の一年は守り抜いた。

21歳になる年の5月、俺は正式に空手部を退部した。

辞める時、あの鉄塊のような拳を持つ先輩が、寂しそうに言った。 「お前、あんなによく耐えたのに……なんでだよ!」 その言葉が、何よりも嬉しかった。

正直、そのまま続けてもいいとさえ思っていた。だが、どうしてもバイクへの情熱だけは捨てきれなかった。道場の床ではなく、風を切るマシンの上に自分の居場所を戻したかったのだ。

地獄の修行は中途半端ではあるが自分の約束は守った。

手元には、新聞配達で稼いだ軍資金と、パチスロ図書館で得た知識。そして、先輩も認めた「中途半端な忍耐力」。

人生の設定変更、第二章。俺のキャンパスライフは、ここから本当の意味で「フル稼働」していくことになる。キラキラしてるかは別問題。


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